バーネットの
「秘密の花園」の中のとても好きな一節
人間がこの世に生きているあいだに、自分がいつまでもいつまでも生きていられると、
心からつよくおもえるようなことは、そうたびたびあることではありません。
おごそかな夜あけまえに起きて、たったひとりで外にでて、
高い高い空を見上げているようなとき、人間はそう思うことがあります。
じっと見ているうちに、うす青い空の色がすこしずつかわって、あかるくなってきます。
いろいろのふしぎなものが見えだしてきたと思うころ、東の空の美しさは、
思わず大きな声でさけびだしたくなるほどです。
日の出のいつにかわらぬ荘厳さに、ひとの心ははっとうたれてしまいます。_______
何千年ものむかしから、毎朝のぼっている日の出。
こういうときに人間は、ほんのちょっとの間ですが、いつまでも生きていられるような気がします。
またこんなときもそうです、たったひとりで夕日の森にたっていると、
しずまりかえった木々の枝のあいだから、ふかい金色の光がちらちらともれて、
いくら耳をすましてもききとれないようなことばを、
くりかえし、くりかえし語りかけてくるように思われるときです。
それからまた濃紺の夜空のしずけさのなかで、無数の星に見まもられているとき、
遠いところに音楽がきこえるとき、まただれかの目をじっとみているときなどに、
人間はそのような気もちになることがあります。
フランセス・ホッジソン・バーネット作
『秘密の花園』より